次のケースに当てはまる方は、遺言書を作成する重要性が特に高い方です。
その理由をそれぞれ解説いたします。
「夫・妻・未成年の子が2人」の4人家族の場合で解説します。
例えば夫が亡くなって、遺言書がない場合は、妻が2分の1、子2人が4分の1ずつの割合で遺産を相続することになります。
もし自宅が夫の名義になっている場合、上記の割合で、妻と子2人の計3人で自宅が共有名義になります。
とはいえ実際のところ、不動産も株式も、何でもかんでも自動的に共有名義となってしまっては色々と不都合ですし、「現金は子供達に、自宅は妻の単独名義にしたい」など、ご家庭によって様々な要望があると思います。
そこで、相続人全員で「遺産分割協議」を行うことによって、共有状態を解消し、遺産を分け合うことができます。
しかし、お子さんが未成年(18歳未満)の場合…ここで問題が生じます。
15歳くらいであれば状況を理解できる年齢だと思いますが、未成年者は遺産分割協議をすることができません。それならば、母である妻が子供たちに代わって遺産分割協議をやってあげれば良いようにも思えますが、これもできません。
母と子は、ともに相続人として財産を分け合う立場のため、妻が子供の代わりに遺産分けをしてしまうと「妻が自宅を取得した結果、子供達の取り分が本来の4分の1ずつより少なくなってしまった…」など、妻の一存によって、子供の利益を害する結果となることがありえるからです。
そこで、未成年者の権利を守るために、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらった上で、妻と特別代理人とで遺産分割協議をする必要があるのです。子供が2人なら特別代理人も2名必要です。家庭裁判所に選任してもらうための手間や費用もかかります。
遺言書があれば、この心配はありません。
遺言書の内容に従って遺産分けをすることになるので、遺産分割協議自体、行う必要がありません。
このように、お子さんが未成年の場合は子供自身の意思で遺産分割ができず、特別代理人という第三者を関与させる必要がありますので、それならば、万が一に備えて遺言書を作成しておき、相続する割合をあらかじめ指定しておいたほうがスムーズであるといえます。
ご夫婦の間に子供がいない方
子供がいないご夫婦の場合、のこされた配偶者は、義理の両親、義理の祖父母、または義理の兄弟姉妹と遺産分割協議をする形になります。
遺産、つまりお金にダイレクトに関係する話ですから、配偶者の亡き後、義理のご家族との関係性によっては、思うように自己主張がしづらいことも想定され、後悔が残る結果となってしまうこともありえます。
遺言書があれば、遺言書の内容に従って遺産分けをするので、義理の家族と協議する必要がありません。
子供連れで再婚された方
前婚で子供がいて再婚された方が亡くなった場合、現在の配偶者と、前婚での子、そして再婚後に子供がいれば再婚後の子が、ともに相続人となって遺産分割協議を行います。
ご関係性にもよりますが、円満に話し合いをするのが難しいケースも多いです。
遺言書があれば、亡くなった方の遺志に従って遺産分けをするので、遺産分割協議をする必要がありません。
事実婚(内縁)の方
内縁の夫、または内縁の妻に財産をのこしたい場合、遺言書は必須です。
遺言書がないと、亡くなった方の戸籍上の親族の方が財産を取得することになるため、内縁の配偶者は財産を取得できません。ふたりで築いてきた財産でも、内縁の配偶者は遺産分割協議に参加する法律上の資格がないのです…。
お互いの親族と内縁の配偶者との間で交流がない場合は、公証役場の公正証書遺言、または法務局の遺言書保管サービスを利用されると安心です。
その理由は、遺言書の信用性を高めておくことで、親族の方との心情的な衝突を防ぐためです。
あるご家族の方が亡くなった後、「財産は内縁の配偶者にのこす」旨の遺言書が、自宅のタンスに保管されていたと知らされた。その内縁の方とは、これまで一度も会ったことがない…。
タンスに保管されていた手書きの遺言書。
法的には問題ありませんが、心情的な面で、親族の方がスムーズに受け入れてくれるかはわかりません。最悪の場合は「内縁の方が自分に有利なように誘導して書かせたのでは?」と疑念が生じたり、心情的な衝突が起こることもありえます。
遺言書を「本人が・本心で」書いたものである、ということの信用性を意識することは大切なことです。
公正証書遺言の信用性が高いのはもちろんですが、法務局の遺言書保管サービスは、死後に「遺言書情報証明書」という証明書を発行してもらえますので、こちらも信用性があるといえるでしょう。
内縁の配偶者の方と親族との間で交流がない場合は、心情的な配慮や、信用性の確保の点についても、ぜひ考えておきましょう。
同性カップルの方
考え方はひとつ前の内縁の配偶者の場合と同じです。同性のパートナーの方に財産をのこしたい場合も、遺言書は必須となります。
遺言書がないと、亡くなった方の戸籍上の親族の方が財産を取得することになるため、同性のパートナーの方は財産を取得できません。人生をともに歩む大切な方のために、万が一に備えて遺言書を作成しておきましょう。
お互いの親族とパートナーとの間で交流がない場合は、内縁の配偶者のケースと同じく、公正証書遺言や法務局の遺言書保管サービスの利用をおすすめいたします。
多様性の時代、家族のかたちは様々です。大切な方のために、遺言書を作成してみませんか?
当事務所では、遺言書の作成サポートを積極的に行っております。お問い合わせフォームからぜひご依頼くださいませ。